私が現在使用しているE130Lというパワーアンプはサウンドパーツというガレージメーカー製だ。本当に良いものは大量生産できないという持論からたどり着いた逸品である。職人による手巻きトランス、手配線による組み立ては今やメーカーでは絶対に出来ないクオリティである。真空管アンプの音を決めると言っても過言ではないトランスは大量生産品には無い、広がり奥行き、広いダイナミックレンジ、分解能、繊細感など、挙げればきりがないほどすべてが凌駕している。1日に1つしか巻けないトランスは、まさに熟練の職人による“作品”なのである。また、部品に至ってはコストを心配することなく選べるわけで、抵抗はデール社製の無誘導メタルクラッド、カップリングコンデンサはInfini-Cap(インフィニ・キャップ)、配線材はベルデン軍用テフロン線、綿巻き線を場所により使い分けている。

写真中央円筒形のグリーンに見える部品はコンデンサにグリーンカーボランダムのテープを巻いているのだ。これは私が後から巻いた。グリーンカーボランダムとは炭化ケイ素と呼ばれる半導体で、手短なものでは紙ヤスリのグリーンのあれである。実はこれ、電磁波を吸収し熱に変換する力を持っている。決していい加減なものではなく、かつて[無線と実験]という本の中で、実際に使用した場合としなかった場合でオシロスコープにて波形をチェックして効果が確かめられているものである。使用する場所はコンデンサが良いようである。電解コンデンサの頭にくっ付けると良いようだ。このE130Lには電源部の電解コンデンサを除くと、電解コンデンサは僅か2個しか使用されていない。しかし私はこの電解コンデンサには別のテープを貼り付けている。実は、フィルムコンデンサ6個にも貼り付けている。さらに言うと、回路のいたる所に同じ素材が貼り付けてあるのだ。それは、以前紹介した、AVALON-LSやインシュレーターでおなじみのライフサウンド製のアルミ箔テープである。現在は販売していないようだが、原理はAVALON-LSやインシュレーターと同じで、振動モードを整える加工がしてあるテープである。電子の流れが効率良くなることに比例して部品の寿命も圧倒的に延びるのである。現在この商品はM3Aシリーズとして引き継がれているので、ぜひともお薦めする。
さて、内部写真を見ていただくとお分かりかと思うが、いたってシンプルである。まさに、シンプル・イズ・ベストで、回路で言うと僅か2段構成である。おそらく、世にある真空管アンプの中で最もシンプル回路であろう。部品点数も極めて少ない。上画面左中央(下拡大写真参照)の電源部周りのシルバーやブルーのコンデンサ類は後から私が付けたので、本来はこの部分ももっとスッキリとしている。このコンデンサは、交流の高域におけるノイズを除去させるため付けてある。いずれも超高周波用だ。

もともと真空管アンプは半導体のアンプに比べて部品点数は圧倒的に少ない。真空管アンプの値段のほとんどは外に見えている部分なのである。メーカー品などで、たまに数百万円等というアンプもあるが、そのようなアンプは部品代以外のところが大きいということだ。ゴールドムンドのように筺体をロレックスの筺体を製作している工場で作れば高価になるのである。オーディオは趣味の世界でもあるのであえて否定はしないが・・・。私には必要ない。ちなみにこのアンプは40万円である。良心的な値段である。合計8個のトランスの製作費だけでも仕入れで30万円近くするのである。もしメーカーなら150万円は下らないだろう。さらに、これにまともなケースを付ければおのずと値段はどこまでも高くなるのである。もちろん、外見は良いに越したことはない。ただ、パワーアンプは黒子で良いと思っている。なので、特別気にもならないのである。
by omirabakesso
| 2012-10-18 14:56
| オーディオ